技術コラム

2022.05.27

精密ボールねじと転造ボールねじの違い

ボールネジには、大きく2種類の製造方法があり、精度や使用用途も違います。
ボールねじ種類の区分は、JIS規格では、位置決め用と搬送用との2つに大別されており、
位置決め用としては、『研削ボールねじ』が使用され、搬送用としては、『転造ボールねじ』が多く使用されます。

今回は、その『研削ボールねじ』と『転造ボールねじ』でどのような違いがあるのか、紹介させていただきます。

 

1 精密ボールねじの特長

精密ボールねじは研削されたねじ軸を利用することから研削ボールねじとも呼ばれます。転造ボールねじに比べて高価ですが熱処理後にネジ溝研削を行うため、より高精度に仕上げることが可能です。
ナットは、2つのナットを組合せたダブルナットが多く使用されています。2個のナットを相互に締め込むように回転させることで、予圧を与えることができます。
予圧によって軸方向隙間をゼロにすることが可能で、バックラッシュを無くせる為、高精度な位置決めを行うことが出来ます。さらに、予圧量を管理することにより使用条件に応じた剛性を持たせることが出来ます。

ナットと予圧については、以前掲載させていただいた、『ボールねじのナット4種類、予圧3種類を解説』をご参照ください。

>>ボールねじのナット4種類、予圧3種類を解説

 

2 転造ボールねじの特長

転造ボールねじのねじ溝は、転造ダイス工具を使用して成形されたねじ溝になります。ナットは基本的にはシングルナットが使用され、低価格です。

 

3 精度等級の違い

精度等級として、JIS規格では、位置決め用としてC0級~C5級と、搬送用では通常、C7級、C10級に区分されています。精密ボールねじは転造ボールねじに比べて高価ですが、熱処理後に仕上加工を行うため、対応できる精度の幅が広いです。

 

4 製造工程の違い

転造ボールネジは、転造ダイス工具を使用し、ネジ溝を成形します。1対の転造ダイスの間に丸棒を挟み、両側から転造ダイスを押し当てていくことで、ネジ溝が成形されます。転造ダイスがあれば、製作時間は短いため、短納期で製作が可能ですが、低負荷、低精度向けとなります。
研削ボールねじは、旋盤にてネジ溝の切削加工を行い、熱処理後に砥石にて研削加工を行います。熱処理後に仕上げ加工を行うことにより、高精度に仕上げることが可能です。転造ボールネジより高価になりますが、高精度、小ロットでの対応が可能となります。

 

5 用途の違い

ボールねじは、モータなどの回転運動を直線運動に変換をするものです。その用途は多岐に渡りますが、JIS規格でも位置決め用と搬送用で区別されているように、用途としても大きく2つに分類されます。
転造ボールねじは医療機器や印刷機器、アミューズメント機器、車両部品など、多くの分野で利用されます。用途としては、荷重の小さいワークの搬送で使用されることが大半です。
精密ボールねじは、高精度且つ高剛性な動きが可能ですので、工作機械などの精密な位置決めに多く使用されます。

 

6まとめ

当社では、様々なボールねじの修理・製作実績がございます。特に、工作機械に利用される精密ボールねじの修理・製作実績が多数あり、ほかにも産業機器、シリンダージャッキ用などの大径ボールねじの修理・製作も行っております。
ボールねじのことでお困りのことがございましたら、お気軽に当社までお問い合わせください。

 

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