技術コラム

2021.10.29

ボールねじのナット4種類、予圧3種類を解説

ボールねじのナットとは

ナットとは、締結部品の1つで、通常はボルトなどと組み合わせて使用されます。ボールねじナットとは、鋼球循環機能をもち、直線運動を行う金具部品です。

循環方式によるナットの種類

ボールねじナットの鋼球循環機能にはいくつかの種類があります。コマ方式、リターンチューブ方式、エンドキャップ方式、デフレクタ方式などの循環方式があり、それぞれに特長があります。

コマ式

コマ式はナットの外径や長さを可能な限り小さく、短くしたタイプのボールねじです。コマ部品と呼ばれる鋼球循環部品によってコンパクトな運用が可能です。

リターンチューブ方式

リターンチューブと呼ばれる管とチューブ止め板をナットの外周に取り付けるタイプのボールねじです。組み立てが容易で量産しやすく、幅広いリード調節が可能ですが、ナットの外径が大きくります。

エンドキャップ方式

ナットに鋼球循環用の貫通穴を設けたタイプがエンドキャップ方式です。ナットの両端にあるエンドキャップと貫通穴を通ることで鋼球が循環します。主に高リードでの運用の際に採用されます。

デフレクタ方式

最も回転バランスに優れた方式の1つで、1リードにつき循環が起こるため、小リードでの利用に適しています。ナットに貫通穴を設置し、よりスムーズな循環を可能にしたエンドデフレクタという方式もあり、こちらは中リードでの運用に最適です。

予圧とは?目的と方法について

予圧とは、予め付加させておく圧力のことです。軸方向の隙間を小さくし、ボールねじの剛性を高めることが目的で、精度を高め、消耗を遅らせることが期待できます。ただし、強すぎる予圧は温度上昇やボールねじの消耗の原因になりますので適正な予圧量を設定することが大切になります。精密な位置決めを行なうためにも、適正な予圧量を設定しなければなりません。予圧をかける方法として、

  • ねじ軸と鋼球の位置を調節する
  • 大きめの鋼球を使用する
  • リードをずらす
  • ばねを使用する

 

などが挙げられます。具体的な手法を次項で説明します。

ボールねじの予圧方式による種類

オーバーサイズボール方式

こちらはシングルナットで利用可能な予圧方法です。ねじ溝よりもわずかに大きいサイズの鋼球をナットに入れることで予圧を発生させます。予圧の強度は弱~中ほどです。

インテグラル方式

こちらもシングルナット用の予圧方法です。ナットの中央位置からリードをずらすことで予圧を発生させます。リードをずらすほど予圧は大きくなり、中強度の予圧です。

間座方式・ピン固定方式

こちらはダブルナットで利用可能な予圧方法です。2個のナットを相互に締め込むように回転させることで予圧を与えることができます。予圧が弱まらないように、ナットの間にピンや間座(スペーサ)などを入れ込み固定します。他の予圧方式に比べて強度の高い予圧をかけることができます。

ボールねじナットのよくあるトラブル

ナットのよくあるトラブルに、組み付け時のナットとねじ軸の分離があります。ボールねじはねじ軸、ナット、鋼球の複数の部品からなる機械要素のため、組み付け精度が非常に重要です。万が一分離が発生した場合、修理が必要になります。

また、ボールねじの長期間の使用による予圧抜けもよくみられるトラブルです。ナット内部が摩耗しすると、バックラッシが起こりやすくなります。その結果予圧がうまく機能せず、精度が低下してしまいます。

ボールねじの修理事例

当社では、様々な修理事例がございます。以下には、ナット、予圧に関連するボールねじの修理事例を紹介します。

ボールねじの再組立て

  • トラブル:軸とナットの分離
  • 対象機器:マシニングセンタ
  • 対象箇所:刃物台移動用
  • ボールねじサイズ:φ32リード6ー800mm

Before

当該設備はボールねじの組み込み時に軸とナットを一旦分離する必要がある設計でした。ユーザーで用意されたスリーブを使用されましたがうまくいかず、ボールが脱落してしまいました。

>>Afterはこちら

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