技術コラム

2025.11.26

リード角の選び方で性能が変わる!ボールねじの設計基礎と応用

ボールねじ設計において、リード角の設定は機械性能を大きく左右する重要な要素です。リード角とは、ねじ山の進み量(リード)をねじ軸の円周に対して角度で表したものです。この値によって効率、伝達トルク、自己保持性、耐荷重性能が変化し、結果として機械全体の動作特性に直結します。本記事では、リード角選定の基礎知識と応用の考え方をご紹介します。

1.リード角と効率の関係

リード角が大きくなると、ボールねじは「回転を直線運動に変換する効率」が高まります。摩擦損失が少なくなり、駆動トルクが低減するため、省エネルギー化や高速送りが可能になります。一方で、リード角が小さいと効率は下がりますが、その分トルク伝達は安定し、負荷保持力に優れます。ボールねじの用途に応じて効率と保持力のバランスを見極めることが重要です。

2.自己保持性の有無

リード角が小さい場合、ねじは外力によって逆回転しにくく、いわゆる「自己保持性」が期待できます。これは昇降装置や荷重保持が必要な用途で有効です。しかし、リード角が大きいと逆駆動が発生しやすく、ブレーキやモーター制御での保持が必要になります。ボールねじの設計段階で「保持が必要か」「駆動優先か」を明確にすることが肝心です。

3.トルクと荷重の関係

リード角が大きいほど、同じ荷重を動かすために必要な回転トルクは小さくなります。逆にリード角が小さい場合は大きなトルクが必要となり、駆動モーターの選定にも影響します。つまり、リード角は「必要なモーター容量」を決める一因であり、機械全体のコストにも直結します。

4.応用設計の考え方

実際の設計では、以下のように用途に応じてリード角を使い分けます。
• 高速送り・軽負荷:大リード角(10°以上)で効率重視
• 精密位置決め・荷重保持:小リード角(2~5°程度)で安定性重視
• 一般的な送り軸・工作機械軸:中程度のリード角(5~10°程度)でバランスを確保
また、リード角を変更することで、同一モーターでも速度レンジを拡大できるため、装置設計の自由度が広がります。

5.設計時の注意点

リード角を大きくするとナットやボールの接触応力が増え、耐荷重性能が低下する傾向があります。そのため、大リード角を採用する場合は、ボール径やナット剛性の設計強化が必要です。逆に小リード角では効率が下がり、発熱が問題になる場合もあります。実機の負荷条件や使用環境を考慮し、計算と実績データの両面から最適値を決定することが求められます。

まとめ

リード角の選び方ひとつで、ボールねじの効率、自己保持性、駆動トルク、耐荷重性といった性能が大きく変化します。高速性を優先するのか、荷重保持を優先するのか、設計者は用途に応じた最適化を行う必要があります。当社「ボールねじ修理・製作センター.com」では、リード角選定を含む新規設計から既存品の改造まで幅広く対応しています。用途に最適な設計をご検討の際は、ぜひご相談ください。

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