技術コラム

2022.07.11

ボールねじの熱膨張の原因と、2つの対策をご紹介

ボールねじの運転中に、ねじ軸の温度が上昇すると、ねじ軸が熱膨張により伸びてしまい、位置決め精度が低下してしまいます。そのため、高精度な位置決めが必要なボールねじを製作する場合は、熱膨張への対策が不可欠です。今回はこのようなボールねじの製作をご検討中の方のために、熱膨張量(熱変位量)の計算式、熱膨張の原因、影響、対策についてご紹介いたします。

熱膨張以外の影響による故障についても、下記記事で解説しておりますので、是非、ご覧ください。

>>ボールネジのよくある故障5つと対象方法をご紹介

➀ボールねじの熱変位量(熱膨張量)について

 ボールねじの熱変位量は下記の式によって求めることが出来ます。ボールねじの温度が1℃上昇すると、ねじ軸は1mにつき12μmの伸びを生じる事を示しています。

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△L=α × t × L

 △L:ねじ部の軸方向熱変位量(mm)

  t:ねじ軸の温度上昇(℃)

    L:ねじ部の有効長さ(mm)

    α:ねじ軸の熱膨張係数(12×10-6/℃)

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熱膨張の原因

 ボールねじにおける熱膨張の主な原因は、摺動摩擦と潤滑不足です。ボールねじはその構造上、摺動摩擦による発熱を避ける事は出来ません。発熱量は回転トルクと回転速度に比例し、摺動抵抗が大きい状況で高速送りを繰り返すと、予想外の温度上昇を生じるので注意が必要です。

熱膨張の発生は、潤滑剤の粘度による影響は大きいため、潤滑剤の選択は極めて重要です。軽荷重・軽トルクで使用される場合は40°C(基油)粘度で10~30cSt、高荷重で使用される場合は35~50cStの潤滑剤が推奨されています。

 

熱膨張が与える影響

ボールねじが熱膨張を起こすことにより、位置決め精度に影響を与えます。高速回転で使用する場合は、さらに大きく影響します。
また、ボールねじの温度上昇により、潤滑剤も温度が上昇し、油の粘度が低下します。回転数が高いほど、油の粘度が低下し、摩擦係数が増大します。

 

熱膨張の対策

熱膨張の対策としては、主に2つの方法が考えられます。

ⅰ発熱量をできるだけ小さくする

発熱量はできるだけ小さくするためには、ボールねじ及び軸受けの予圧量を適正にすることや、ボールねじのリードを大きくし使用回転数を下げることが挙げられます。

外部からの対策としては、ネジ軸外周面に潤滑油シャワーや空気を当てる方式、ねじ軸を中空にして内部に冷却液または空気を通す方法もあります。

また、潤滑剤の選定も重要です。使用条件に合わせて、適切な潤滑剤を選定することで、発熱量を抑えることが期待できます。

 

ⅱ発熱による影響を小さくする

 発熱による影響を小さくするためには、ボールねじの基準移動量の目標値を、あらかじめマイナスに設定しておくことが有効です。これにより発熱による伸びの影響を抑えられます。一般的には、発熱による温度上昇を2℃~5℃考慮し、基準移動量の目標値をマイナス側に設定しておきます。(1mあたり-0.02~-0.06mm)

また、ネジ軸にあらかじめプリテンション(予張力)を与えておき、この弾性変位によって熱変位を相殺する方法もあります。

 

ボールねじのことならオージックまで!

今回は、ボールねじの熱膨張と、熱膨張が与える影響について、解説いたしました。

当社では、熱膨張様々なボールねじの修理・製作実績がございます。自社製、他社製問わず、ボールねじの修理・製作が可能です。お客様の要望に沿って、最適な方法を提案させていただきます。ボールねじのことでお困りのことがございましたら、お気軽に当社までお問い合わせください。

 

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