ボールねじは、工作機械や半導体製造装置、搬送装置などに幅広く用いられる精密要素部品です。その性能を決定づける要素のひとつが「精度等級」です。設計段階で適切な精度等級を選定できなければ、過剰品質によるコストアップや、逆に性能不足による不具合につながります。本記事では、JIS規格に基づくボールねじの精度等級の見方と選び方を、設計者の視点からわかりやすく解説します。
1. ボールねじの精度等級とは?
ボールねじの精度等級とは、その位置決め精度やリード誤差、バックラッシなどの許容値を規定した指標です。JIS規格(JIS B 1192)では、複数の精度等級が定義されており、主に以下のような用途ごとに選択されます。
- 高精度機械(工作機械、精密測定機器など)
→ 高い位置決め精度が求められるため、C0〜C5クラスを使用 - 一般的な産業機械・搬送装置
→ C5〜C7クラスが多い - 負荷移送や位置決め精度をあまり重視しない用途
→ C10クラスでも十分
このように、精度等級は「どのくらいの誤差を許容できるか」を示す重要な基準です。
2. JIS規格における精度等級の種類
JIS B 1192では、ボールねじの精度等級がC0・C1・C2・C3・C5・C7・C10などに分類されています。
数値が小さいほど精度が高く、許容誤差が厳しくなります。
- C0〜C3:超精密用途(位置決め機能を重視する工作機械など)
- C5:工作機械の送り軸など、高精度とコストバランスの取れた等級
- C7:産業機械、搬送装置など一般的な用途
- C10:粗い送りや単純な移動機構
特に設計者が注目すべきなのは「リード誤差(E)」や「変動幅(e)」です。これはナットの移動量と回転角度の関係を表し、位置決め精度に直結する要素です。
3.精度等級ごとの用途事例
下表は、精度等級とその典型的な用途をまとめたものです。設計時の目安としてご活用ください。
| 精度等級 | リード精度(代表値) | 主な用途事例 |
| C0 | ±0.0035mm/300mm | 半導体製造装置、精密測定機 |
| C1 | ±0.005mm/300mm | 半導体製造装置、精密測定機、医療用ロボット |
| C2 | ±0.007mm/300mm | 光学機器、超精密工作機械 |
| C3 | ±0.008mm/300mm | 金型加工用マシニングセンタ、高精度旋盤 |
| C5 | ±0.018mm/300mm | 一般工作機械(フライス、旋盤)、産業ロボット |
| C7 | ±0.05mm/300mm | 搬送装置、簡易位置決め装置 |
| C10 | ±0.21mm/300mm | リフター、昇降機構、搬送コンベヤ |
※数値は代表例であり、メーカーにより差異があります。
4. 精度等級で確認すべき主要な規格項目
ボールねじの精度等級を確認する際、以下の要素をチェックする必要があります。
1.リード誤差(E)
代表移動量と基準移動量の差。位置決め精度に直結。
2.変動幅(e300)
300mmごとのリード変動幅。送りの直線性を評価する指標。
3.バックラッシ
ボールねじのガタ(遊び)。プリロード方式でゼロにする事も可能。
4.回転精度・真円度
回転に伴う振れ。特に高速回転用途では重要。
これらの要素を総合的に評価して、用途に合った等級を選定することが大切です。
5. 精度等級選定のポイント
実務における精度等級の選び方を、以下の観点で整理します。
(1) 位置決め精度の要求レベル
- μm単位の位置決めが必要な工作機械 → C3以下を選定
- 数十μm単位で良い産業機械 → C5〜C7
- 粗い送り(搬送や昇降機構) → C10
(2) コストとのバランス
高精度ボールねじは、製造・研削工程が増えるため価格が大幅に上昇します。
「本当にその精度が必要か」を設計段階で明確化することが重要です。
(3) 使用環境
- 高速回転・高負荷 → 精度等級だけでなく、プリロードや剛性も検討
- 温度変化の大きい環境 → 熱膨張の影響を考慮し、精度等級を過剰に設定しすぎない
6. よくある選定ミスと注意点
設計現場では、次のようなミスがよく見られます。
- 「高精度=万能」と考えてしまう
→ 必要以上に高精度を選んでコストアップ。 - 累積リード誤差を見落とす
→ 長尺ボールねじでの送り精度に不具合が発生。 - バックラッシ対策を軽視する
→ 精度等級だけでは解決できず、プリロード設計が必須。
このように、単に「等級が高ければ良い」とは限らず、用途に応じた適切な選定が不可欠です。
まとめ
ボールねじの精度等級は、JIS規格に基づいてC0〜C10まで定義されており、用途に応じて最適なクラスを選定することが重要です。
- 工作機械 → C5以下
- 一般産業機械 → C5〜C7
- 粗い送り用途 → C10
選定時には、リード誤差・累積リード誤差・バックラッシなどを総合的に判断し、コストや環境条件とのバランスをとることが、最適設計への第一歩となります。
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