技術コラム

2026.01.27

ボールねじ精度等級の見方と選び方|JIS規格を簡単に解説!

ボールねじは、工作機械や半導体製造装置、搬送装置などに幅広く用いられる精密要素部品です。その性能を決定づける要素のひとつが「精度等級」です。設計段階で適切な精度等級を選定できなければ、過剰品質によるコストアップや、逆に性能不足による不具合につながります。本記事では、JIS規格に基づくボールねじの精度等級の見方と選び方を、設計者の視点からわかりやすく解説します。


1. ボールねじの精度等級とは?

ボールねじの精度等級とは、その位置決め精度やリード誤差、バックラッシなどの許容値を規定した指標です。JIS規格(JIS B 1192)では、複数の精度等級が定義されており、主に以下のような用途ごとに選択されます。

  • 高精度機械(工作機械、精密測定機器など)
    → 高い位置決め精度が求められるため、C0〜C5クラスを使用
  • 一般的な産業機械・搬送装置
    → C5〜C7クラスが多い
  • 負荷移送や位置決め精度をあまり重視しない用途
    → C10クラスでも十分

このように、精度等級は「どのくらいの誤差を許容できるか」を示す重要な基準です。

2. JIS規格における精度等級の種類

JIS B 1192では、ボールねじの精度等級がC0・C1・C2・C3・C5・C7・C10などに分類されています。
数値が小さいほど精度が高く、許容誤差が厳しくなります。

  • C0〜C3:超精密用途(位置決め機能を重視する工作機械など)
  • C5:工作機械の送り軸など、高精度とコストバランスの取れた等級
  • C7:産業機械、搬送装置など一般的な用途
  • C10:粗い送りや単純な移動機構

特に設計者が注目すべきなのは「リード誤差(E)」や「変動幅(e)」です。これはナットの移動量と回転角度の関係を表し、位置決め精度に直結する要素です。

3.精度等級ごとの用途事例

下表は、精度等級とその典型的な用途をまとめたものです。設計時の目安としてご活用ください。

精度等級 リード精度(代表値) 主な用途事例
C0 ±0.0035mm/300mm 半導体製造装置、精密測定機
C1 ±0.005mm/300mm 半導体製造装置、精密測定機、医療用ロボット
C2 ±0.007mm/300mm 光学機器、超精密工作機械
C3 ±0.008mm/300mm 金型加工用マシニングセンタ、高精度旋盤
C5 ±0.018mm/300mm 一般工作機械(フライス、旋盤)、産業ロボット
C7 ±0.05mm/300mm 搬送装置、簡易位置決め装置
C10 ±0.21mm/300mm リフター、昇降機構、搬送コンベヤ

※数値は代表例であり、メーカーにより差異があります。

4. 精度等級で確認すべき主要な規格項目

ボールねじの精度等級を確認する際、以下の要素をチェックする必要があります。

 1.リード誤差(E)

     代表移動量と基準移動量の差。位置決め精度に直結。

 2.変動幅(e300)

     300mmごとのリード変動幅。送りの直線性を評価する指標。

 3.バックラッシ

     ボールねじのガタ(遊び)。プリロード方式でゼロにする事も可能。

 4.回転精度・真円度

     回転に伴う振れ。特に高速回転用途では重要。

これらの要素を総合的に評価して、用途に合った等級を選定することが大切です。

5. 精度等級選定のポイント

実務における精度等級の選び方を、以下の観点で整理します。

(1) 位置決め精度の要求レベル

  • μm単位の位置決めが必要な工作機械 → C3以下を選定
  • 数十μm単位で良い産業機械 → C5〜C7
  • 粗い送り(搬送や昇降機構) → C10

(2) コストとのバランス

高精度ボールねじは、製造・研削工程が増えるため価格が大幅に上昇します。
本当にその精度が必要か」を設計段階で明確化することが重要です。

(3) 使用環境

  • 高速回転・高負荷 → 精度等級だけでなく、プリロードや剛性も検討
  • 温度変化の大きい環境 → 熱膨張の影響を考慮し、精度等級を過剰に設定しすぎない


6. よくある選定ミスと注意点

設計現場では、次のようなミスがよく見られます。

  • 「高精度=万能」と考えてしまう
    → 必要以上に高精度を選んでコストアップ。
  • 累積リード誤差を見落とす
    → 長尺ボールねじでの送り精度に不具合が発生。
  • バックラッシ対策を軽視する
    → 精度等級だけでは解決できず、プリロード設計が必須。

このように、単に「等級が高ければ良い」とは限らず、用途に応じた適切な選定が不可欠です。


まとめ

ボールねじの精度等級は、JIS規格に基づいてC0〜C10まで定義されており、用途に応じて最適なクラスを選定することが重要です。

  • 工作機械 → C5以下
  • 一般産業機械 → C5〜C7
  • 粗い送り用途 → C10

選定時には、リード誤差・累積リード誤差・バックラッシなどを総合的に判断し、コストや環境条件とのバランスをとることが、最適設計への第一歩となります。


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